結論:**パキシル(パロキセチン)はSSRIの中では“やや鎮静寄り”**に位置づけられることが多いです(抗コリン作用もやや強め)。ただし個人差・用量・飲む時間で体感は変わります。
目次
鎮静傾向マップ(🌙=鎮静寄り / ⚖️=中間 / ☀️=賦活寄り)
SSRI
- 🌙 パロキセチン(パキシル)
- 🌙〜⚖️ フルボキサミン(デプロメール/ルボックス)
- ⚖️ シタロプラム
- ⚖️〜☀️ エスシタロプラム(レクサプロ)
- ⚖️〜☀️ セルトラリン(ジェイゾロフト)
- ☀️ フルオキセチン(プロザック系)
SNRI
- ⚖️〜☀️ デュロキセチン(サインバルタ)
- ☀️ ベンラファキシン(イフェクサーXR)/デスベンラファキシン
- ☀️ ミルナシプラン(トレドミン/日本)/レボミルナシプラン
NaSSA / SARI / そのほか(“眠気”が出やすい群)
- 🌙(低用量ほど強い)ミルタザピン(レメロン) ※H1遮断優位。
- 🌙(低用量で鎮静)トラゾドン(SARI)※睡眠補助で少量併用されがち。
- 🌙 ミアンセリン(NaSSA系)
NDRI / SMS / SPARI など
- ☀️ ブプロピオン(NDRI) ※日本未承認(抗うつ)。
- ⚖️〜☀️ ボルチオキセチン(トリンテリックス/Fonksera)(SMS)
- ⚖️〜☀️ ビラゾドン(SPARI)
三環系抗うつ薬(TCA)※差が大きい
- 🌙 アミトリプチリン/ドキセピン
- ⚖️ クロミプラミン
- ☀️ ノルトリプチリン/デシプラミン
MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)
- 🌙 フェネルジン(やや鎮静)
- ☀️ トラニルシプロミン(不眠・活性化が出やすい)
そのほか
- 🌙 アゴメラチン(メラトニン作動+5-HT2C拮抗)※就寝前で睡眠改善寄り。
- ⚖️ エスケタミン(TRD向け、定期投与下。鎮静というより解離・めまいなどが中心)
実務のコツ(失敗しにくい使い分け)
- 日中の眠気が困る/集中を上げたい → ☀️〜⚖️寄り(例:レクサプロ、セルトラリン、デュロキセチン、ボルチオキセチン)。
- 不安が強くて“立ち上がりの賦活”が怖い → 🌙〜⚖️寄り(例:パロキシチン、フルボキサミン、就寝前ミルタザピン少量併用)。
活力・やる気が戻りやすい4剤
デュロキセチン(SNRI)
- 体感:⚖️しっかり系(エネルギー↑、痛みも和らぐ)
- 向いてる:倦怠+肩腰・神経痛など痛み併発
- 注意:悪心・発汗・血圧↑。まず食後・朝で
ベンラファキシンXR(SNRI)
- 体感:☀️用量上げると“シャキッ”感↑
- 向いてる:気力不足+不安もある
- 注意:血圧/脈↑・離脱出やすい→毎日同時刻に
ボルチオキセチン(SMS)
- 体感:☀️/⚖️ “頭のもや”が晴れる(注意・処理速度↑)
- 向いてる:集中低下・作業スピード↓、性機能副作用を避けたい
- 注意:悪心は出やすいが一過性→食後開始が楽
ミルナシプラン(SNRI)
- 体感:☀️賦活寄り(最もしっかり目に“目が覚める”感)
- 向いてる:朝起きられないほどの無気力
- 注意:初期に不安↑・不眠が出やすい→朝・少量から
1分で選ぶなら
- 痛みがつらい → デュロキセチン
- 不安も同時に下げたい → ベンラファキシンXR
- ブレインフォグが邪魔 → ボルチオキセチン
- 強く活性を上げたい → ミルナシプラン(初期不安に注意)
はじめ方のコツ(共通)
- 少量→2週様子見→必要なら増量(効き始めは2–4週)
- 眠れないなら朝、日中ねむいなら夜へ(ボルチオ除き基本は朝推奨)
- 悪心は“食後”で軽減/血圧は自宅で週数回チェック(SNRI)
詳細一覧(クラス別・代表薬・特徴)
記号:🌙=鎮静寄り/⚖️=中間/☀️=賦活寄り
SSRI(セロトニン再取り込み阻害)
| 薬 | 体感 | 得意 | よくある副作用 | 重要ポイント |
|---|---|---|---|---|
| エスシタロプラム(レクサプロ) | ⚖️→☀️ | うつ・不安全般の第一選択 | 吐き気、性機能 | 相互作用少なめ。朝/夜どちらでも1日1回 |
| セルトラリン(ジェイゾロフト) | ⚖️→☀️ | 不安、PTSD、強迫も | GI症状、賦活、不眠 | 初期は朝が無難 |
| パロキセチン(パキシル) | 🌙 | 不安強めのタイプ | 眠気、体重↑、性機能、離脱強 | CYP2D6強阻害。中止は特にゆっくり |
| フルボキサミン(ルボックス/デプロメール) | 🌙〜⚖️ | 不安/OCD | 眠気、相互作用 | CYP阻害強め(併用に注意) |
| シタロプラム | ⚖️ | うつ | QT延長注意 | 高用量でQTリスク、心疾患で要配慮 |
どのSSRIも:性機能副作用・低Na・**出血傾向(NSAIDs等併用で↑)**に注意。
SNRI(セロトニン+ノルアドレナリン)
| 薬 | 体感 | 得意 | よくある副作用 | 重要ポイント |
|---|---|---|---|---|
| デュロキセチン(サインバルタ) | ⚖️→☀️ | 倦怠+慢性痛合併 | 悪心、発汗、血圧↑ | 糖尿病性神経障害・線維筋痛の痛みにも |
| ベンラファキシンXR(イフェクサーSR) | ☀️(用量依存) | 不安+活力不足 | 血圧/脈↑、発汗、離脱 | 同時刻に毎日。漸減徹底 |
| ミルナシプラン(トレドミン) | ☀️ | 強い無気力 | 不安↑・不眠(初期) | 朝・少量スタートが無難 |
NaSSA / SARI ほか
| 薬 | 体感 | 得意 | よくある副作用 | 重要ポイント |
|---|---|---|---|---|
| ミルタザピン(レメロン/リフレックス) | 🌙(低用量ほど眠い) | **睡眠・食欲↓**の回復 | 眠気、体重↑、食欲↑ | 就寝前。不眠合併に好相性 |
| トラゾドン(デジレル) | 🌙 | 入眠・中途覚醒 | 眠気、ふらつき | 低用量は睡眠補助に併用されがち |
SMS / SPARI / NDRI(“その他の現代薬”)
| 薬 | 体感 | 得意 | よくある副作用 | 重要ポイント |
|---|---|---|---|---|
| ボルチオキセチン(トリンテリックス/Fonksera) | ⚖️→☀️ | “頭のもや”改善(注意・処理速度)+気分 | 悪心、便秘 | 性機能副作用が比較的少なめ。食後開始が楽 |
| ビラゾドン(海外) | ⚖️→☀️ | うつ+不安 | GI症状 | 日本未承認 |
| ブプロピオン(NDRI・海外) | ☀️ | 無気力/性副作用回避 | 不眠、焦燥、痙攣域値↓ | 日本で抗うつ適応なし(禁煙も実質流通薄) |
三環系(TCA)/ MAOI(難治例・古典的)
| 薬 | 体感 | 得意 | 主要副作用/注意 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| アミトリプチリン | 🌙 | 痛み合併、不眠 | 口渇、便秘、体重↑、心毒性 | 低用量で睡眠/痛みに有用 |
| ノルトリプチリン | ⚖️→☀️ | うつ | 抗コリン少なめ | TDM(血中濃度)有益 |
| クロミプラミン | ⚖️ | OCD/うつ | 抗コリン、痙攣閾値↓ | 強力だが副作用注意 |
| MAOI(フェネルジン等/海外) | 変動 | 難治例 | 食事(チラミン)制限・相互作用 | 日本一般診療では稀 |
補助・増強(部分反応時の“次の一手”)
- 抗精神病薬増強:アリピプラゾール/ブレクスピプラゾール/クエチアピンXR など
- リチウム、T3
- モダフィニル(残る眠気・倦怠:適応外、賛否あり)
- 心理療法(CBT/BA)はどの薬とも併用相性◎
服用タイミングのコツ(ざっくり)
- 賦活寄り(☀️):朝(例:ベンラファキシンXR/ミルナシプラン/多くのSNRI)
- 鎮静寄り(🌙):夜(例:ミルタザピン/トラゾドン/パロキセチンは夜開始が多い)
- ボルチオキセチン:食後(悪心対策)。朝夜は体感で決める
安全チェック(はじめに確認)
- 血圧(SNRIで↑)/Na(SSRIで↓)/心電図QT(シタロプラム等)
- 出血リスク(SSRI×NSAIDs/抗血小板)
- 相互作用:パロキセチン/フルボキサミンはCYP阻害強め
- 双極性スクリーニング:ハイになりすぎ・短眠・多弁歴があればまず鑑別
迷ったらこの順で
- 不安が主 → SSRI(レクサプロ/セルトラリン)
- 無気力・痛み合併 → デュロキセチン
- 不安+活力も → ベンラファキシンXR
- ブレインフォグが邪魔 → ボルチオキセチン
- 不眠・食欲不振がつらい → ミルタザピン(就寝前)
何が“賦活”を生むのか(メカ簡潔)
- NET(ノルアド再取り込み)を止める → 覚醒・集中↑
- NEは「覚醒・注意・実行機能」の燃料。SNRIs(デュロキセチン/ベンラ/ミルナシプラン)はNETを阻害し、前頭前野で注意/動機づけを押し上げやすい。
- 前頭前野はDATが少なく、DAの回収をNETが肩代わりしているので、NETを止める=DAも間接的に↑→“シャキッと”感じやすい。
- DAT(ドパミン再取り込み)を止める → やる気・報酬感度↑
- **NDRI(ブプロピオン)**はDA/NEを直接↑。やる気・活力の回復が出やすい一方、不安・不眠も出やすいので体質選びが大切。
- セルトラリンは高用量で弱いDAT阻害を持ち、やや賦活寄りに振れやすい人がいます。
- “セロトニンの受容体調整”でブレーキ解除/回路効率化
- ボルチオキセチン:5-HT1A作動・5-HT3/7/1D拮抗など“多受容体調整”で、GABA介在抑制を弱め=皮質の発火効率↑→「頭のもやが晴れる」体感につながることがある。
- フルオキセチン:5-HT2C拮抗性がNE/DA放出の抑制を外す方向に働くため、人によっては賦活寄りに。
- α2オートレセプター遮断で放出増強
- ミルタザピンはα2遮断でNE/5-HT放出↑。ただしH1拮抗が強く低用量は鎮静寄り(賦活というより“眠り回復”の薬)。
賦活感の“出方”と代表薬
| 賦活の源 | どう賦活? | 代表 |
|---|---|---|
| NE↑(NET阻害) | 覚醒・集中・作業速度↑、意欲↑ | デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン |
| DA↑(DAT阻害/NET経由) | 報酬感度・やる気↑、楽しさの感度↑ | ブプロピオン、(一部)セルトラリン高用量 |
| 5-HT多受容体調整 | 皮質回路の“ノイズ減”→クリアさ↑ | ボルチオキセチン |
| α2遮断+5-HT2/3拮抗 | 放出↑(賦活)+H1拮抗で眠気→全体は鎮静寄り | ミルタザピン |
使い分けの実務ヒント
- やる気・集中を上げたい:まずSNRI(デュロ/ベンラ/ミルナ)。不眠体質なら朝・少量から。
- “ブレインフォグ”が強い:ボルチオキセチンを第一候補に。
- 不安が強い体質:賦活が強すぎるとつらいので、SSRI寄りから入るか、夜にミルタザピン少量をブレーキに併用する手も。
- 不眠が出たら:朝固定/カフェイン調整/就寝前の“鎮静ルーティン”(入浴→ストレッチ→画面オフ)をセット。

コメント